2012年1月8日

メルエムがたった10局で囲碁棋士に勝った件について

 先日『HUNTER×HUNTER』の単行本を読み返していて疑問に思ったことがあって、メルエムが宮殿に招いた囲碁棋士を、たった10局で打ち負かすシーン(23巻)がありますよね?あれって可能なんでしょうか?

私は以前は、「まあ普通は有り得ないけど、所詮漫画だし、メルエムの凄さを表すために必要な描写なんだろうな。一局目でいきなり勝ったわけでもないし、仕方ないかなー」ぐらいに思っていたのですが、先日コミックスを読み返してみて、王のスペックを持ってすれば十分可能なのではと思えてきました。

まず王の相手をしたあの囲碁棋士ですが、彼は東ゴルトー共和国のトップ棋士ではあるかもしれないが、あの世界の世界チャンピオンというわけでもないでしょう。東ゴルトーのモデルは、現実の北朝鮮かと思われますが、つまり彼は北朝鮮で一番強い碁打ちぐらいの強さであって、世界で一番強い棋士=セドルや古力ぐらいの強さがあるとまでは思えない。
(補足:単行本23巻のプフのセリフによると、あの囲碁棋士は国内チャンピオンとして連れてこられているので、東ゴルトーが現実の中韓並の囲碁強国でない限りは、世界チャンピオンである可能性は低いと考えられる。)

根拠としては、軍儀において王はコムギを中々攻略できずにいたが、それは軍儀の場合は、東ゴルトーチャンピオン=世界チャンピオンだったからとも考えられます。作中の描写だけでは軍儀というゲームの詳しい性質はよく分からないし(軍儀一度やってみてえ)、漫画的演出の為仕方ないとはいえ、囲碁や将棋が軍儀に比べてそれほど底が浅いとは思えない。つまり囲碁棋士や将棋棋士があっさり王に敗北した理由の一つには、軍儀と違って「世界チャンピオンではない者」が挑戦したからと考えた方が辻褄が合う気がするのです。仮に李世石や羽生善治がメルエムの相手をしていたとしたら、10局やそこらで簡単に攻略されるとも思えない。

そして、囲碁の東ゴルトーチャンプ=北朝鮮のトップ棋士、の棋力はどのくらいかというと日本でのプロ低段クラスぐらいに見ておくのが妥当ではないでしょうか?現実の国際戦で、日本棋士が北朝鮮代表に不覚を取ったことは何度かあると思いますが、それでも日本のトップレベルと比べると北朝鮮はまだまだ格下でしょう(だと思いたい)。というわけで、王の相手をしたあの囲碁棋士は、日本のプロ低段レベルと仮定します。

次に王の才能と成長速度ですが、かなりのものですね。本来なら、たった10局の実戦をこなしただけでプロレベルの棋力に到達するなど出来るわけがありません。囲碁の手筋というのは、たった10局の碁に集約できるほどには少なくないので、10局の碁を徹底検討し、丸暗記したところで得られるものは僅かでしょう。

でも、王が軍儀でコムギと戦ってる描写を見ると、その創造力や発想力、読みの力は確かなものがありますね。コムギが昔生み出した孤狐狸固(ここりこ)という戦型を、誰に教えられるともなく離隠(はなれがくし)という名で蘇らせたり、コムギの手の意図や読み筋を瞬時に把握し、自分の負けを読み切って投了したり。

更に、王いわくチェス・囲碁・将棋・・・ルールは違えど一級の打ち手にはその打ち筋に独特の呼吸がある。ゆえに相手の呼吸を乱すことが肝要・・・!定石を知ると相手の呼吸が見えてくる。そこからは相手が呼吸しにくい手を生み出すだけだ」とのことですが、これは碁の格言の一つである「敵の急所は我が急所」という考え方に近いものがありますね。相手が打たれて嫌な手を打つというのは、碁の基本的な考え方といっても過言ではないですから。

というわけで、碁の基本が分かっている上に、物凄い読みの能力を有しているわけですから、その気になれば一路ずつ虱潰しに読んでいって、「相手が呼吸しにくい手」とやらを探すことだって出来るわけです。更にその発想力と応用力を持ってすれば、そこから新しい手筋や定石を生み出したりすることも可能でしょう。つまり王は、軍儀において孤狐狸固を生み出した時のように、囲碁においても棋譜並べや棋書を読んだりするまでもなく、新しい手筋や定石を幾らでも習得することが出来るわけです。

以上の事から学習能力が半端ないと思うので、王の場合は、一局の実戦をこなしただけで、十局分も百局分も学ぶことが出来るんじゃないでしょうか。これらを踏まえて、プロ級の実力者相手に10局で勝つための成長ペースをシミュレートしてみると、

一局目終了時 アマ初段
二局目 アマ三段
三局目 アマ五段
四局目 アマ六段
五局目 アマ七段
六局目 アマ八段
七局目 院生下位レベル
八局目 院生中位レベル
九局目 院生上位レベル
十局目 プロ低段(相手は疲労もあって王の勝利)

※アマ八段と院生下位の力関係はよく分からないので、この場合アマ八段は碁会所八段ぐらいと仮定する。

このぐらいのペースで成長していけば、たった10局であの囲碁棋士を倒すことぐらいは可能ですね。ヒカ碁の倉田が「級位者の頃の記憶がない」と言ってたぐらいですから、王なら一局目でいきなり初段ぐらいになっても何らおかしくはない。それ以降は、大体一局一段ぐらいのペースで強くなっていき、通常なら伸び悩んだりする筈の高段の域に入ってからは、逆に碁のレベルが上がって得るものが増えるので、成長ペースもそれほど落ちないんじゃないかと推測します。

・・・なんか、何の根拠も無い妄想をだらだらと書いてしまいましたが、「囲碁の世界についてあれこれ語るブログ」なんで勘弁してください(汗)。

というか、この話「HUNTER×HUNTER」読んでない人には全然分からんな。いや、
「HUNTER×HUNTER」読んでる人にとっても、正直どうでもいい話かも。まあ、でも囲碁とは関係なしに「HUNTER×HUNTER」面白いですよね。今、アニメもリメイクされて放送中だし、休載作家として有名だった作者も頑張って連載してますからね。

因みに現在連載中の選挙編は、レオリオが当選すると予想しておきましょう。でも読者の裏を掻くのが上手い作者のことですから、それであっさり会長就任とはならず、何かもう一波乱ありそうな予感がしますね。では、また今度!

2012/1/8初出→2012/11編集

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