2012年9月8日

漫画・天地明察三巻

日本囲碁界の問題点ばかりあげつらうのも余り気分のいいものでもないので、ちょっと一息ついて違う話題いきたいと思います。

今月の15日からいよいよ映画『天地明察』が公開されるということで、それに先行する形で、既に天地明察の最新三巻が発売されてますね。


天地明察(3) (アフタヌーンKC)

三巻の概要を述べると、前巻で関孝和に勝負を挑むも痛恨の誤問題を出してしまい、意気消沈したまま北極出地に出向くことになった春海(安井算哲)の旅編ですね。
道中を共にする建部・伊藤の二人と世代を超えた友情(?)を築きながら、算術について語りあったり、観測を通じて歴術や天文への知識を深めたりしつつ、春海が少しずつ自分を取り戻していくお話です。

三巻は暦術についての話が多く、やや専門的になってくるけど、私は結構楽しめました。今日の我々にとって、暦というものはカレンダーを見ることですぐに確認できる当たり前のものだけど、春海の時代においては、まだ未知の部分が多く残された学問であり、完璧な暦を完成させることは、一つの「権威」にもなりうるぐらい重大な意味を持っていたようですね。それはまさしく、「自分たちが何時を生きているのか?」―つまりは、そこに生きる全ての人々の「存在と時間」を決定付けるものであるからです。
それ故に、春海たちの挑戦や探求は、少年漫画的なロマンや好奇心を呼び起こし読者を物語へと引き込むのだと思う。また、その過程で春海たちが直面する様々な困難や課題は、現代の我々が抱える多くの諸問題に通じるものがあるので、春海たちの葛藤や問題意識を読み手が共有しやすくなっているようにも感じる。

そして、やはり作画も素晴らしい。和風テイストの画が本当に世界観に合ってると思うし、人物の心理描写から宇宙や自然などの背景描写にいたるまで、演出が行き届いている。
原作を先に読んだ人からすれば、キャラのイメージが違ったり、コミカライズされたことに違和感を感じたりといったことが、もしかするとあるのかもしれない。
しかし、漫画版しか知らない私にとっては、春海たちのキャラが既に固まってしまっている上に、碁や算術や天文など専門的な知識が必要とされるシーンも、画があることで理解しやすくなっていると思うので、むしろ漫画版こそが、より天地明察の世界を堪能するのに適しているんじゃないかと思っている。

「原作読んでから語れよ」と言われるかもしれないが、以前にも書いたとおり、原作がよほど素晴らしくしっかりしているであろうことが漫画版で十分に伝わってくるので、わざわざ原作を読む必要性すら感じないのである。

映画の方は、まだ見に行くか決めかねてる段階なんだけど、是非ともヒットして、囲碁に興味を持ってくれる人が少しでも増えてくれたら嬉しいですね。因みに月刊 碁ワールド 2012年 09月号 [雑誌] のほうでも天地明察の特集しています。興味のある方は、是非そちらもどうぞ。

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