2012年10月7日

技術的敗因

碁は、時間が経つと考え方が変わったり、新しい発見が見えたりするものなので、以前書いたヒカル―村上戦を改めて記事にしていきたいと思います。


 黒 進藤ヒカル初段 白 村上信一二段 黒の中押し勝ち

以前私は、「このまま地を囲うのは甘いかもしれない。反撃してやる」と村上二段がケイマに打った手を精神論で以って批判しました。その理由として・・・
村上二段は「固く打とう、地に辛い打ち方をしよう」と言っているのだから、当然ここは白Aに受ける一手であり、それ以外の手を打つようでは方針が一貫せず、既に気持ちで負けているといった説を展開しました。 しかし、Aに受ける手はある意味勇気のいる手ですね。当然、相手の模様拡大(黒B)を誘って打つわけだから、どこかで消しにいかなきゃならないし、後のシノギに自信がないと打てない手です。羽根さんとかが打ちそうな勝負師の手ともいえるわけで、村上二段の棋風ではないのかもしれない。

ヨセ勝負に持ち込みたい村上二段としては、全局のバランスを考えて中央に頭を出しておきたいというのは自然な発想だとも言えます。左上の黒もこの時点ではまだ少し薄く見えるので、絡んでいきたくもあります。一路右の一間トビとかだと緩んでる感じもするので、こう打ちたくなるところなんでしょうね。 ところが、あくまで結果論でしかないのかも知れないけど、最終的にはこの手が仇になってしまうという。

ケイマに打った以上は、当然出切られる可能性を考慮に入れておかなければならないはずで、当初は村上二段も戦えるという公算だったのかもしれない。しかし、いざ出切られてみると、予想以上の厳しさに村上二段も参ったんじゃないだろうか。実際、このあと最初に打ったAの石が攻められる展開になっては、白は何をやっているんだという話である。

これほどにデギリが厳しくなった要因としては、黒が左上隅に打った様子見によってBの利きが生じ、この黒の一団が強化されたことが挙げられるだろう。 左上隅の様子見の正確な手順は実のところ不明で、若干不自然な印象もあるが、少なくとも黒Bが残るような受け方はまずかったんじゃないだろうか。つまり、最初に打ったAの手は、それを打った時点では悪い手とも言えず、むしろ「この一手」とさえ言えるものだったのかもしれない。しかし、後の進行を誤った為に結果として敗因にまで結びついてしまったということが言えるのである。 最初に100点の手を打っても次に0点の手を打ってしまえば、最初の手も0点になりかねないのが碁の怖いところである。若獅子戦で悪手を好手に化けさせたヒカルとはまるで逆のことを、村上二段はやってしまったわけだ。

村上二段がこの碁を早々と投げてしまった理由には、Aという頑張った打ち方をしたものの、結局それを活かしきれず形勢を悪化させてしまった自らに、不甲斐なさや怒りを感じていた部分があったからなのかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿