アタリというのは、碁を始めた者が恐らく一番最初に覚える囲碁用語だと思いますが、それを使いこなすには相当の技量が必要になってくると思います。何でもかんでもアタリにすればいいってものじゃない。アタリにすれば当然相手は逃げもするし、ツギもする。なのでしっかりと目的を持って打たないと、相手を強化するだけのマイナスにもなりかねない着手である。
当然といえば当然の話で、こちらは先手だと思ってアタリを掛けたのに、手抜きをされたら後手ですからね。「石を取るぞ!」と脅しを掛けたのに、それに相手をしてくれないということは、相手はその石を「小さい」と判断してるということですから。アタリは絶対先手の強制力を持つ着手であるが故に、打つタイミングを誤れば、形勢を損なうことにもなりかねない諸刃の剣であるとも言えるわけです。コミックス20巻のヒカルが森下九段相手に苦杯を舐めた一局でそれを確認してみましょう。
黒 進藤ヒカル 白 森下茂男 白の中押し勝ち
元ネタは李昌鎬と趙治勲の碁らしいですね。→【棋譜再生】 黒 趙治勲 白 李昌鎬 146手まで白中押し勝ち
単行本では103手目までしか描かれてないので、これだとヒカルは、自分が打った後相手の手番で投了したということになりますね。
54手目、森下九段が△にハネた局面。次にヒカルはAに割り込むわけですが、もしAに打たず▲の右に受けると・・・
このような進行になります。これでも私には普通の進行のように見えますが、ヒカルは白に地を稼がれて不満と見たのでしょう。なので白の注文を外そうと前図のように割り込んだわけですが・・・
このように白が2と下から受けてくれるなら、これは白薄いし前図と地も大分違ってきますね。これがヒカルの読み筋というわけです。なので、それを察した森下九段が実戦のように反発したのは必然でしょう。でも、「いけない、ここをハミ出されては!」というヒカルのセリフを見るに、ヒカルにとっては意表を突かれた一手だったようですね。これによって上下の黒が分断され、ヒカルは苦戦を強いられたように見えます。
2にアタリにされ、次にAに抜かれるわけにはいかないから黒は何か打つ必要がありますが、アタリだからといって手拍子でAにツナいでしまってはいけません。Aにツグと自然な流れで白Bにつがれて下方の△三子に触ってくる。同じ打つにしても、実戦のようにCにカミ取ったほうが、黒は眼も豊富だし地も大きいというわけです。
ヒカルが敗着を打った局面。「アタリに手抜き!?し、しまった、中央が先だったか!?」というのは、白が打った2のところに黒は打つべきだったということでしょうか? 仮に黒が2のところに打ったとすると、少なくとも下辺の黒地が多少は違ってくるし、場合によっては左下からの白一団への寄りつきを見ることができて、大きいという事なんだと思います。
ヒカルが森下九段の勝負師の雰囲気に呑まれながら、アタリを巡る攻防で二度もしてやられ、そのままプレッシャーに押し潰されるように自滅していったような一局でした。ヒカルにとってはこの上なく不本意な一局だったと思います。
ところで最後に一つ断っておかねばならないのは、それは私がしっかりした解説を見て棋譜の内容を語っているというわけではないということです。私は自分で自分の解説をほぼ正しいと思って記事を書いてるし、それなりに自信を持ってはいるけれども、それでもプロの先生が見たらそれは違うよということがあるかもしれない。なので、私の言ったこと全てを安易に鵜呑みにされても困るのです。要は、単なる自己満足でヒカ碁の対局の感想を述べているのだなぐらいに思っていただければ、私としては幸いだということです。
2011/11/29初出→2012/12編集
ヒカルが敗着を打った局面。「アタリに手抜き!?し、しまった、中央が先だったか!?」というのは、白が打った2のところに黒は打つべきだったということでしょうか? 仮に黒が2のところに打ったとすると、少なくとも下辺の黒地が多少は違ってくるし、場合によっては左下からの白一団への寄りつきを見ることができて、大きいという事なんだと思います。
ヒカルが森下九段の勝負師の雰囲気に呑まれながら、アタリを巡る攻防で二度もしてやられ、そのままプレッシャーに押し潰されるように自滅していったような一局でした。ヒカルにとってはこの上なく不本意な一局だったと思います。
ところで最後に一つ断っておかねばならないのは、それは私がしっかりした解説を見て棋譜の内容を語っているというわけではないということです。私は自分で自分の解説をほぼ正しいと思って記事を書いてるし、それなりに自信を持ってはいるけれども、それでもプロの先生が見たらそれは違うよということがあるかもしれない。なので、私の言ったこと全てを安易に鵜呑みにされても困るのです。要は、単なる自己満足でヒカ碁の対局の感想を述べているのだなぐらいに思っていただければ、私としては幸いだということです。
2011/11/29初出→2012/12編集
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